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 クラウドネイティブの世界へようこそ。これからのコンピューティングのスタンダードとなっていく「クラウド」を理解して、クラウドを「ネイティブ」に使いこなせるようになること、それが本連載の目的です。

 1年間、全12回の連載となります。ぜひ最後までおつきあい下さいませ。


モバイル&ソーシャルの時代

 コンピューター、コンピューティング、そしてデジタルコミュニケーションの世界が大きく変わろうとしています。2011年、そのキーワードは「モバイル」と「ソーシャル」という2つの核となるテクノロジーによるものです。つまり、我々が触れるデバイスがモバイルメディアになり、コミュニケーションを取る手段がソーシャルメディアに変わるという意味合いです。

 モバイルメディアは、ポケットに入るケータイはスマートフォンへと移り変りはじめました。さらに、スマートフォンより画面の大きなサイズのコンピュータでは、ノートパソコンからタブレットへとその販売の中心が移行しています。ともに、重量の軽さ、すぐに電源が入る手軽さ、そしてタッチパネルなどの直感的な操作と、アプリによる汎用性の高さが魅力です。

 一方ソーシャルメディアは、人がメディアとなるコミュニケーション手段です。例えば世界最大のソーシャルメディアであるFacebookは、6億人近くのユーザーを集め、アメリカではこの大量のユーザーを目当てにして企業がユーザーとの直接的なコミュニケーションを行う場として知られています。また日本で最も活発なソーシャルメディアであるTwitterは、140文字で書き込める手軽さも助けて、一般の個人や企業が入り乱れて、止まらない140文字の会話のプラットホームを作り出しています。

 ソーシャルメディアは誰でもアクセス出来るオープン型だけでなく、社内や学校内などのメンバーのみが利用できるクローズド型の活用も活発になり始めました。このような時代を支えてくれるのが、クラウド、そしてクラウドの概念なのです。


 クラウドネイティブの世界へようこそ。これからのコンピューティングのスタンダードとなっていく「クラウド」を理解して、クラウドを「ネイティブ」に使いこなせるようになること、それが本連載の目的です。

 1年間、全12回の連載となります。ぜひ最後までおつきあい下さいませ。


モバイル&ソーシャルの時代

 コンピューター、コンピューティング、そしてデジタルコミュニケーションの世界が大きく変わろうとしています。2011年、そのキーワードは「モバイル」と「ソーシャル」という2つのコアテクノロジーによるものです。つまり、我々が触れるデバイスがモバイルメディアになり、コミュニケーションを取る手段がソーシャルメディアに変わるという意味合いです。

 モバイルメディアは、ポケットに入るケータイはスマートフォンへと移り変りはじめました。さらに、スマートフォンより画面の大きなサイズのコンピュータでは、ノートパソコンからタブレットへとその販売の中心が移行しています。

テーマのふりかえり

 1年にわたる連載を通じて、現在ビジネスシーンで活用されているモバイル機器やモバイルサービスについて網羅してきました。ご紹介したテーマのうち、モバイルデバイスに関するものは大きく分けると3つありました。「通信サービスと組み合わせて常にオンラインになるモバイルパソコン」「普及と機能向上が加速するスマートフォン」「タブレット型デバイスという新機軸」です。

 そしてこれらとともに活用する環境として「クラウド」があり、モバイルデバイスとクラウドを組み合わせることによってモバイルワークスタイルを構築することが可能になりました。その一例として「ノマドワーク』というキーワードが登場しました。この1年間、デスクトップパソコンの新モデルが登場してメディアを賑わす様子を一切見ませんでした。コンピューターの中心はモバイルデバイスとなり、モバイルを前提としてクラウドなどのサービスが次々に生まれているのが現状です。

 個別に見ていくと、特に元気だったのがスマートフォン、とりわけiPhoneでした。2007年の発売当初は日本の既存のケータイに比べて端末自体の性能面で大きく劣り「こんなものは日本では売れない」と言われていました。しかし2009年後半から非常に大きな売り上げを示し始め、現在販売された端末は単一シリーズで300万台を超えるとされています。2010年にソニー・エリクソンが個人向けのAndroidスマートフォンを登場させ、スマートフォン市場が非常大きく立ち上がりました。しかしこれは、アメリカをはじめとする海外から約2年遅れた現象であり、「ケータイ先進国」であった日本はスマートフォンではむしろ後追いの国になってしまったのです。

 そして2010年4月に発売されたAppleのiPadで、「タブレット」と呼ばれる薄い板のようなデバイスに一段と注目が集まるようになりました。スマートフォンより大きな画面ながら、ノートパソコンよりも軽くバッテリーが持つ、そんな中間のポジションに入り込んできたのです。iPadを皮切りに、パソコンメーカー各社がiPadのようなタブレットデバイスを投入するようになり、一段とモバイルデバイスの多様性も拡がることが考えられます。


クラウドが基地、司令塔があなた

 これまでは会社のパソコンだけでこなしていた業務を、パソコンに加えて複数のモバイルデバイスでこなすようになるときに心配なのが、データやセキュリティの問題。パソコンからデータを他のデバイスに移そうとするときはメールで転送したりUSBメモリでコピーする必要がありますが、多くの企業ではUSBメモリを会社のパソコンに指すこと自体が禁止されています。ノートパソコンそのものを持ち出せばよいかも知れませんが、それも禁止されていることがあり、なかなか自由にITを使いこなして効率的な仕事のスタイルを作ることが難しいのが日本の現状です。

 セキュリティを守りながら自由なワークスタイルを手に入れるためにも、クラウドの活用は不可欠になってきます。データの置き場所は会社が認めたクラウドにし、またそこへアクセスするモバイルデバイスも会社が定めたセキュリティ基準をクリアするものであれば、むしろ安全性が守られながら自由で効率的な業務に当たることができるようになります。スマートフォンやタブレットには、中身を自動的に消去する機能が備わっているモノがほとんどです。なくした場合もパソコンよりリスクが少ない場合がほとんどなのです。

 会社のパソコンからコピーしなくても、モバイルデバイスでどこからでもクラウド上のメールやファイルにアクセスすることが可能になるクラウドとモバイルの組み合わせは、当面の新しいワークス対るんすたんだー度になると考えられます。そしてこれらのクラウドに命令を出すのは他ならぬあなたです。パソコンから、スマートフォンから、タブレットから、自在に指示を出しながら、自分のアシスタントのようにクラウドが仕事をコーディネートしてくれます。

 この世界観、スタンダードは、まずビジネスから進行しますが、ビジネスの世界に限った話ではありません。例えば大学のキャンパスで学生の学習を支えるクラウドがあったり、お母さんのための子育てクラウドがあったり、より簡単なタブレットデバイスから活用するお年寄りのための地域クラウドがあっても良いのです。非常に本質的な、応用可能なコンピューティングの世界が拡がろうとしているのが現在です。

 ここで重要なのは、まず応用をデザインしようとする人がきちんとこれらのサービスを活用することです。実は使いやすかったタッチして操作するスマートフォンのように、クラウドとモバイルを活用したワークスタイルにまず触れる事で理解し、活用方法屋自分にあった応用例をデザインして初めて、社会に対して提案することができるようになるのです。


未来のワークスタイルのポイントとは

 モバイルからクラウドを操るワークスタイルは、まず個人の仕事の時間と効率を変化させます。膨大なタスクに追われていた人は、効率的な時間の活用によって、その負担が軽減されます。また秘書を雇っていた人も、コミュニケーションなどを自分の手元のスマートフォンからコーディネートすることで、秘書のコストは必要なくなります。

 例えばTrip Itという旅行クラウドは、航空会社から届いた予約確認メールをTrip Itに転送するだけで、自分の出張の予定をリストアップし、クラウド上にあるカレンダーにその情報を読み込んでくれて、フライト間近になるとスマートフォンに知らせてくれるようになります。もしフライトが変更になったりキャンセルした場合でも、その瞬間にスマートフォンに知らせが入り、他の便を予約するなどの次のアクションを促してくれます。さらに、ビジネスホテルの予約メールを転送すれば、空港からホテルまでの移動手段をナビゲーションしてくれるのです。オフィスに置いておく秘書よりも優秀に、円滑な出張をサポートしてくれるのです。

 このようにビジネスの面倒だった作業がクラウドとスマートフォンによって、次々にDIY化されていくのが現在なのです。そしてモバイルとクラウドは、社内やチーム内のコラボレーションにも作用してくれます。先ほどのクラウドのカレンダーでチーム内のスケジュールが一目で分かったり、ファイル交換も意識することなくこなすことができます。クラウドに業務を集中させることで効率化を図り、より本質的な作業に時間やアイディアを避けるようになるのです。

 現在は変化が非常に激しい時代です。今手元にあるクラウドとモバイルがベストな方法である期間は、もしかしたら短いかも知れません。しかし一方で、繰り返しになりますが、本質的な効率化の手法へリーチしており、クラウドやモバイルのサービスが変わったとしても、経験知は生かされることになるでしょう。分からないからやらないのではなく、まず触れて試してみることが重要です。変化の時代には変化で対応する、そういう柔軟な姿勢から、あるいはあなたが新しいビジネスやサービスを生み出すことにもつながるかも知れません。

 ここまで、スマートフォンという新しい電話の登場、モバイル高速データ通信の種類が増えてきたことなど、端末、通信規格などを中心に、モバイルがトレンドとなってきました。大企業、そして中・小規模、さらにはSOHOやノマドと呼ばれる限りなく個人に近い働き方をしている人たちにとっても、働き方やその効率性などを進化させるきっかけをもたらしてくれます。

 しかしこれらのモバイル端末を最大限に生かすためには、仕事で使うシステムのクラウド化が不可欠です。

クラウドとは?

 これまでのコンピュータの使用では、パソコンやサーバーも含めて、個人や企業が自分で用意し、ソフトウエアをセットアップして、自分で管理してきました。しかしクラウドは、サーバーやソフトウエアをインターネット上にあるサーバーに任せて利用代金を支払うだけで、サーバーの保守管理や機能向上などのメンテナンスを含めてサービスを受け続けることが出来るようになります。

 例えば有名なサービスがGmailを企業向けに導入できるGoogle Appsです。企業は自社でメールサーバーを運営するときに、規模にもよりますが、サーバーを落とさないようにしたり、大量に届く迷惑メールの処理などで、予想以上にコストが膨らんでいきます。またユーザー側も、オフィスの決まった端末からしかアクセスできなかったり、毎朝迷惑メールを消す作業が加わったりして、非常に非効率的です。

 Google Appsで企業向けのGmailを導入すると、1メールアカウントあたりの年間コストを低く抑えられるだけでなく、ダウンタイムが0.1%以下に保証されたり、迷惑メールのためにサーバーを増強したり、毎朝ユーザーが迷惑メール消しに時間を取られなくてすむようになります。コストや効率性のメリットは、大企業でも小規模ビジネスでも同様です。

 このように、メールサービスだけでなく、スケジュール管理などのグループウエア、顧客管理、ウェブサービス運営など、多岐にわたってクラウド活用が可能になっており、初期投資や運用コストを抑えられる以上のメリットが得られるのです。


クラウドとモバイルの関係

 クラウドサービスのもう1つのメリットは、クラウドサービス側が対応すれば、会社で支給されたコンピューター以外の様々な端末からクラウドに、セキュリティを保ちながらアクセスすることが出来るようになる点です。そのデバイスとして、スマートフォンなどのモバイルデバイスが重視されるようになってきました。

 引き続き、Gmailを例にします。Gmailではサーバー上にメールボックスがあり、パソコンから使う場合はそのGmailのメールボックスにアクセスしてメールを読み書きします。メールはサーバー上にバックアップしておいてある状態になっているため、パソコン側に取り込んだり、消してしまってもサーバーの上では保管されている状態になります。受信メールだけでなく、送信メールもサーバーに記録が残されます。

 こうしておくことで、会社のデスクトップパソコンからでも、出先で使うノートパソコンからでも、共通の1つのメールボックスにアクセスするため、メールがどこかへ行ってしまった、と言うことはありません。またデスクトップから書いた送信メールや下書きを、ノートパソコンから閲覧・編集することも可能になります。

 それだけではありません。Gmailは、GoogleのAndroidはもちろん、iPhoneやBlackBerry、Windows phoneといったスマートフォンにも対応します。そのため、会社のデスクに戻ることなく、さらにノートパソコンを持ち歩くことなく、クラウドにスマートフォンから直接アクセスすることによって、自分のメールにいつでもどこからでもアクセスすることが出来るようになります。

 クラウド導入の際には企業側のサーバーの初期費用コストがなくなり、維持管理、バージョンアップ、増強などのコストを安く抑えることが出来るようになるといったメリットがありました。ここにユーザーからのアクセスやサービス活用まで自由になり、働き方や時間の使い方、場所の使い方などが変わってきます。


3つのフリーとリアルなモバイルワークスタイル

 クラウドとモバイルが結びつくことにより、働き方には3つのフリーが加わると考えています。

「場所のフリー」
「文脈のフリー」
「体験のフリー」

 まず場所のフリーは、働く場所がオフィスから開放されるという意味です。例えばメールチェックも、これまでのセキュリティで固められた状態では、会社のコンピューターからしかチェックできなかった例もありました。しかしクラウド側とスマートフォン側それぞれでセキュリティを強化できるようになり、またクラウドへどんな端末からでもアクセス出来る体制を整えることで、働く場所は自分が今いる場所で良くなります。

 文脈のフリーとは、仕事の中で定型化されている手順やワークフローなどが自由になることを意味しています。これまで稟議を通したり、承認を取ったりする際に、紙のドキュメントに判子を集めていく作業が必要でした。会議が週1回しかない場合は、集に1つずつしか承認が取れず、それだけで1ヶ月が過ぎる非効率すらありました。例えばBlackBerryを提供するリサーチ・イン・モーション社では、BlackBerryで利用できる社内システムを活用することで、承認作業をモバイル環境から行うことが出来るようになります。こうしてよりスピーディーな意志決定が実現し、ビジネスの文脈が変わります。

 最後の体験のフリーとは、端末に寄らない仕事のスタイルを確立することを意味します。これまでオフィスには専用端末があったり、紙で行わなければならない仕事があったり、仕事の種類と体験が紐付いていました。しかしクラウド化、モバイル端末の活用により、同じ仕事を様々な端末や手段でこなすことが出来るようになります。場所のフリー、文脈のフリーと相まって、自分自身や状況にぴったりとあった体験で、仕事を進めることが出来ます。

 もちろん他にも効果はありますが、まずこの3つのフリーの体験を体験することにより、浮いたコスト以上のメリットを享受することになります。もちろんクラウドとモバイルはツールであり、きっかけに過ぎません。メリットを享受するためには、社内の仕組みやワークフローをクラウド&モバイルに対応させる必要があるのです。

 「ノマド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ノマド(Nomad)とは遊牧民という意味で、中央アジアなどで牧草地などを家畜とともに移動しながら暮らす民族のことを指します。モバイルコンピューティングの発達は、我々のワークスタイルにも、この「ノマド」的な要素を取り入れることができるようになってきました。

 ノマド・ワークスタイルは、決まったオフィスを必要とせずに仕事をこなしていくワークスタイルです。主に自宅を仕事場にしながらクライアント先などを飛び回るフリーランスの人々が真っ先に当てはまる働き方です。筆者自身、ノマド・ワークスタイルを取っています。


ノマドワークスタイルの1日

 筆者の1日を例にとって、ノマドワークスタイルはどんな動きをするのか、見ていきましょう。

 まず自宅で目が覚めてから、コーヒーを入れて朝食を取りながら、仕事を始めます。ノートパソコンを自宅の無線LANに接続して、自分のデスクでもリビングでも、気分によってノートパソコンを移動させて、メールをチェックし、情報収集をし、原稿を片付けます。こうして午前中いっぱいは、その場で仕事をします。

 ランチタイムになると打ち合わせに出かけます。例えば外苑前のカフェでランチを取りながら、打ち合わせをします。ここでも、無線LANスポットがあるお店を選んで打ち合わせをします。打ち合わせ中に仕上がったミーティングのメモは、同じプロジェクト(相手もまたノマドワーカー)にその場でメールを送ります。

 ミーティング自体は1時間ちょっとで終わったのですが、そこで追加のアイスティーを頼んで、無線LAN環境の下で引き続き仕事を続けます。ランチから合わせて3時間ほど滞在し、お店を後にして次の打ち合わせに向かいます。

 次の打ち合わせ場所で案件を済ませたら、そのまま電源とインターネットを借りて、先ほどランチタイムにやりかけた仕事の続きを済ませます。

 このようにして、ノートパソコンと無線LAN、そしてもし必要であれば電源のある場所を渡り歩いて、1日の仕事を済ませていきます。連絡はスマートフォンやSkypeで取り合い、移動中に届いたメールへの返信を、やはりスマートフォンから済ませます。


ノマドワークに必要なモバイルツール

 ここで出てきたツールは、ノートパソコン、無線LAN、電源、スマートフォン、Skype。そして無線LANや電源がつながるカフェも登場します。必要であれば、パソコンをケータイの回線でネットに接続する通信モジュールがあると、お店の無線LANの有無を気にすることはありません。

 これらのツールを鞄に入れておけば、自分がいる場所がオフィスになり、どこでも仕事ができる状態になります。特に個人や小規模のビジネスをしている人にとって、オフィスや通信回線などの固定費を削減することができ、また時間や場所などの自由を手に入れるワークスタイルを実現することができるようになります。

 しかし、仕事は自分だけいればこなせるわけではありません。お客さん先やユーザーなど、必ず相手が存在しています。そしてその相手と上手くコミュニケーションを確保することもまた、ノマドワークには重要になってきます。

 電話やメールをいかに出先で裁くことができるか。また以下に紙の書類を持たず、デジタルデータを持ち運んだり、クラウドのサーバにためておいて、いつでも取り出すことができる状態にしておくか。ただモバイルツールを買いそろえるだけでなく、コミュニケーションやドキュメントをノマド対応にする必要があります。

 クラウドツールについては、次回紹介したいと思います。


ノマドワークから生まれる新しい働き方

 ノマドワークには、これまで書いてきたツールの使い方だけでなく、人がどのように働くか、という議論も絡んできます。

 これまでの働き方の多くは、企業に就職することが基本であり、最も信頼され、また安定する働き方でした。しかし昨今の経済や政情の不安定な状況、学生の就職氷河期の再来は、必ずしも企業に就職することが安定ではなくなってしまいました。もとより若い学生は就職先に困り、また就職しても経済状況に応じたリストラがいつ行われるかわかりません。そして、例え大企業であっても、倒産や合併といった変化に直面しています。

 このような関係の中で、同じリスクが多い時代であれば、個人で仕事をしようと考える動きが出始めました。そしてモバイルコンピューティングの発達は、この動きをツールの側面からサポートしています。

 また、出産を機に仕事を辞めた女性が再び働く手段として、モバイルツールを使いこなしてノマド化する動きも多く、ソーシャルネットワーキングサービス上にはそういった人々のコミュニティもあります。

 企業に勤めることやそういう人がいなくなることはありませんが、特に日本においては、新しい選択としてのノマドワークがようやく誕生しました。モバイルツールの使いこなしによって実現することができる働き方は、企業の組織の中でも採用する例が見られます。

 生活様式、仕事のプロセス、ワークフローなど、これまでの常識にとらわれず抜本的に変更する要素は多いですが、より自由で効率的な仕事の仕方として、一度検討してみても良いでしょう。

 さて、これまでアプリケーションと言えば、パソコン用のソフトの事でした。パソコンが成熟してきて、高性能・多機能化し、価格も高くなっています。例えば、オフィスアプリケーションとして標準となっているMicrosoft Officeは多機能でオフィス周りの文書作成の全てをこなすことができます。しかしアプリケーションをそろえると、5万円近くにもなってしまいます。

 ユーザーの中には、これだけの高機能を使いこなせないから、同じフォーマットの文書が作れて、シンプルで軽快に動作するアプリケーションを求める声も出てきました。いわば、アプリケーションの「ダウンサイジング」への要望も出てきています。

 そんな状況の中で、2008年7月11日、Appleが全世界でiPhone 3Gをリリースした日にオープンしたのがApp Storeです。App Storeとは文字通り、iPhone / iPod touchで動作するアプリケーションストアのこと。iPhoneは画面が小さく、1画面ずつ、単機能で利用できるシンプルなアプリがあふれました。当然、価格も数百円程度になりました。

 AndroidやWindows phone、BlackBerryといった他のスマートフォンプラットホームもそれぞれストアを用意しています。しかしまだまだ市場として成熟しておらず、普及台数の観点、市場の成熟性から、まずモバイルアプリケーション開発をiPhone向けApp Storeに、という開発者が多いのが現状です。

 では、App Storeの今は、どうなっているのでしょうか。


■ 数ヶ月で50万本販売、シンデレラストーリーとその後

 AppStoreがオープンして一斉にアプリ開発がスタートしましたが、日本のアプリ開発は世界で非常に健闘しています。プログラマの笠谷真也さんが開発したアプリ「ポケットギター」は、115円の有料アプリでしたが、リリース後半年程度で50万本を売り上げる大ヒットになりました。

 また慶應大学発のベンチャー企業パンカクは、ディズニー映画「トロン」をモチーフにした「Light Bike」というアプリで、全米のゲームアプリランキングで1位を取るヒットを飛ばしています。カラパゴス化が進むと日本のモバイルアプリケーションが、世界に受け入れられるケースが増えてきました。

 またモバイルアプリケーション市場は国別の特徴も出始めました。特に日本は特徴的なアプリ市場に成長しています。

 米国をはじめとしたApp Storeでは、有料アプリの6割以上がゲームで、アプリ単価も500円以下のものが多いのですが、日本では1500円〜2000円前後の辞書アプリが上位に並んでおり、ゲームの比率は17%程度と、海外の1/4にとどまっています。「まじめなマーケット」が日本のアプリ市場なのです。

 App Storeは15万本以上のアプリ、50億本以上のダウンロードを記録する巨大市場に成長しました。しかしそれ故に、リリースしたアプリをなかなか見つけてもらえない、ダウンロードしてもらえない、という開発者の悩みと、どこにアプリがあるかわからない、というユーザーの悩みがあがってきており、ミスマッチが鮮明になってきました。


■ 受託は困難を極めるアプリ開発

 アプリビジネスで成功しているのは、機動力がある小さな会社や個人が中心です。アプリの価格はこれまでよりも安く、これまでのパソコン向けソフト開発に比べると、かけられる時間や人員などのコストは非常に小さくなります。コストとして、半分というレベルではなく、1/10や1/100という規模にまで小さくなることもあります。

 となると、これまでのソフト会社やゲーム会社は、なかなかiPhoneアプリで収益を上げるところまで持って行けないのが現状です。ただ、プラットホームとして世界5000万台のiPhone / iPod touchが世界で動いており、数のメリットは享受できるようになってきました。

 一方、アプリ開発を受託する開発者はなかなか難しい局面にたたされています。

 iPhoneのアプリは非常に直感的な操作が重要とされています。ちょっとしたタイミングのずれや画面配置の違いで、使い勝手が大きく変わり、アプリそのものの評価を左右してしまいます。つまり、リリースしてから、ユーザーの声を聞きながら細かい修正を加えていくことが必要なのです。

 これまでのアプリ開発は、仕様書を受け取り、アプリを作り、納品して契約が終わる、というパターンが多く、オーダーする会社も受ける会社もこれまで通りの契約や手法で取りかかります。しかしユーザーからの細かな修正、つまりバージョンアップを繰り返す必要があるモバイルアプリは、どこまでが初期の契約なのか、難しい判断になります。

 何事も経験がない新しいことに取り組むとはじめはトラブルがつきものです。しかしモバイルのスピード感と、開発に携わる人たちの意識がずれていると、市場やユーザーから取り残されてしまいます。開発側とオーダーする側は、よりオープンなコラボレーション型のビジネススタイルを確立しなければ、なかなかうまくいかないようです。

 また、App StoreはAppleが品質管理を行う以外は、非常にオープンな市場で、商習慣も日本のケータイコンテンツなどとは全く違います。国内向けに作るとしたら、まだまだケータイ向けが強いのですが、世界に向けて情報発信やツール提供、PRを行う場合は、非常に効果的な活用ができます。

 いずれにしても、モバイルアプリに取り組む際は非常に戦略が重要となります。

■ 触った第一印象は「高品位」

 日本発売は2010年4月下旬の予定ですが、一足先にiPadを入手して触ってみました。

 感触はとにかく「高品位」であるということ。マップやビデオ、そして電子書籍や電子雑誌などのコンテンツが、指を画面上で動かすと、iPhone以上にスムーズに追随して動いてくれます。そしてガラスとアルミの手触りは、これまでのプラスティックで作られたコンピュータを遙かに上回る質感と堅牢性を誇ります。

 最初に持った印象は『思ったよりも重たくなかった』でした。約680gの筐体はこれまでのケータイやAmazon Kindleといった電子ブックリーダーに比較すると重たい部類に入り、ネットブックよりは少し軽い、というあたりでしょうか。ただ多くのパソコンよりは軽く、また画面の視野角も広いので、机の上に置いて使っても問題ありません。

 キーボードはiPhoneと同上に、タッチパネルの上に表示されるソフトウエアキーボードを採用していますが、縦使いでも横使いでもどちらでも利用でき、すぐに慣れることが出来ます。パソコンでタッチタイプが出来る人なら、少し触れば、すぐにブラインドタッチが出来るようになるでしょう。


■ iPadというデバイスとモバイルOSの成長スピード

 iPadはAppleがリリースしたタッチパネルで利用するコンピュータです。9.7インチの美しいIPS液晶を搭載していますが、操作方法は複数の指で操作できるタッチパネルはiPhoneのものと同じ。OSもiPhoneと同じiPhone OS 3.2を搭載しています。最大の違いは画面のサイズ。iPhoneは3.5インチですが、iPadは9.7インチ。iPhone約4画面分がiPadに収まります。

 iPadはなぜこんなに注目されるのでしょうか。その理由はiPhoneの歴史をひもとくと分かります。

 iPhoneはフルタッチ画面のケータイとして2007年に発売されました。そして2008年にApp Storeと呼ばれるiPhoneで動くアプリケーションを購入・ダウンロードできるストアがオープンしました。今や、15万本のアプリケーションがストアに並び、30億本以上のアプリがダウンロードされるマーケットに成長しています。

 これまでのケータイは買った時に機能が決まっていました。ケータイが発売されてから出てきた最新機能には、基本的に対応出来なかったのです。しかしiPhoneは、購入してからアプリを増やすことで、より新しい機能を利用することが出来るようになります。

 そしてそのアプリを開発するのが、AppStoreでビジネスや表現をしたい個人や企業のプログラマーたちなのです。開発スピードをコミュニティに頼ることで、最新の機能やトレンドをいち早く取り込んだアプリが並ぶ、成長スピードを獲得したと言えます。

 この経験が生かされたコンピュータがiPadなのです。

 iPadにも、リリース当初からApp Storeがあり、iPhone向けにアプリを提供してきた開発者がこぞって開発を進めているほか、新聞や雑誌などが紙面を読めるアプリを提供したり、アパレルブランドがインタラクティブなチラシ兼ストアになるアプリを提供したり、これまでiPhoneに参加してこなかった企業の参入も加速しています。ここでも、iPadの画面の大きさが新しいタッチデバイスの使い方を切り開いています。

 なおモバイルアプリ開発の環境については、次回詳しくご紹介します。


■ リビングからモバイルまで

 iPadが発表されたプレゼンテーションで、Appleのスティーブ・ジョブズCEOはリビングにあるソファに腰掛けて足を組んでiPadを操作していました。つまり家でくつろいでいる時に使うコンピュータ、という位置づけを色濃く出していたのです。

 確かに自宅に帰ってちょっとメールをチェックしたりウェブを見たりするなら、既存のパソコンをわざわざ起動しなくても、ケータイと同じ感覚で使えるコンピュータの方が良いし、バッテリーで動くことが前提で好きな場所・体制で利用でき、また煩わしい初期設定などもありません。

 コンピュータに詳しい人がiPadに飛びつくことは想像に容易ですが、iPadに触れたこれらの人たちがまず思うことは「自分の親に買ってあげよう」ということ。普段からメールとウェブしかしないのに、時々「うまく動かない」と電話がかかってくる両親なら、iPadのほうがシンプルに使えるし、なにより写真がキレイに表示できる点もうれしいはずです。

 そして、操作方法がシンプルと言うことは、ビジネスなどの作業の効率化にも直結します。例えばある保険会社は、営業スタッフ向けにiPhoneを100台導入して今後も増やそうとしていますが、お客様向けの商品紹介のプレゼンテーションにも使えるiPadを検討しているそうです。

 またiWorksというワードプロセッサ、プレゼンテーション、表計算のアプリケーションもそれぞれ10ドル以下で購入することが出来ます。タッチ操作だけで、キレイなレイアとのドキュメントやプレゼンが作れると、ちょっとした出先でのインタビューや発表までもiPadだけで済ませることが出来てしまいます。

 コンピューティングがより直感的でシンプルになり、それをモバイル環境に持ち出せる経験は、より多くのアウトプットをダシながら効率的にビジネスを進めるモバイルワークにとてもフィットすることになるでしょう。

 そして、この手の小型タッチデバイスは、WindowsやAndroidなどのその他のモバイル対応OSでもリリースされることになります。自分のパソコンの環境やデザインの好みなどで、タッチデバイスを選べる時代が、すぐそこにやってくるでしょう。

■ データの通信方式を知ろう

 モバイル環境でパソコンをネットにつなぐ方法は、充実し、速度も向上してきました。ケータイの電波を使ったデータ通信はサービス開始当初、9600bpsという速度からスタートしましたが、現在は最大21Mbps、将来的には自宅やオフィスで利用できる100Mbpsを超える速度まで向上させようとしています。

 現状でも、メールチェックやウェブブラウジングなどの仕事で使う用途はもちろん、YouTubeなどの動画サイトを閲覧することもストレスなくできるようになってきました。

 モバイルデータ通信サービスはデータの通信方式によって分かれます。現在はケータイと同じ電波を使う3Gデータ通信、新しいデータ通信サービスWiMAX、そして無線LANの3つです。

 3Gデータ通信サービスは、今最も使いやすく、また安定しているデータ通信サービスです。ケータイでおなじみのドコモ、au、ソフトバンクに加えて、データ通信に特化してサービスを提供しているイーモバイルから選ぶことができます。

 特にこの中で、都市部での利用が多い場合はイーモバイルがおすすめです。HSPAという下り最大21Mbpsという高速通信に対応し、またノートパソコンやiPod touchなどと同時購入で割引が受けられるキャンペーンを家電量販店などで進めています。

 またエリアの広さで言えばドコモが魅力的です。電波がつながりやすいと定評があるFOMAと同じ回線を使って、HSUPA下り7.2Mbps、上り5.8Mbpsの通信を行うことが可能。今回のタイトル写真のように、回りに何もない山の中でも、キチンとネット回線を確保できます。

 最近注目されているのがWiMAX。この通信方式は、ケータイとは違い、モジュールを指すだけですぐにネットにつながる簡単さが魅力です。また、最大下り40Mbpsという、ケータイの電波などとは別格のスピードを利用することもできます。ただし、始まったばかりのサービスでエリアの拡大はこれからです。

 最後に無線LAN。これまでは家庭やオフィスでネット回線をワイヤレスにするために使われてきましたが、実は街中での無線LANサービスの充実も進んでいます。マクドナルドや駅などで利用できるソフトバンクBBのモバイルポイント、スターバックスや地下鉄駅のエリアが充実するドコモのMzone、東京都内を中心に屋外で利用可能なライブドアなどのブランドがあります。

 速度も最大54Mbpsと高速で料金も手頃であるため、まずモバイルを始めるときに選んでみても良いサービスでしょう。


■ 内蔵ノートパソコンを選ぼう

 通常のケータイ通信やWiMAXでデータ通信を行う場合は、通信モジュールをノートパソコンのUSBコネクタに挿して利用することがほとんどです。

 コネクタ・アンテナ一体型のシンプルなモノから、パソコンとモジュールをUSBケーブルで接続するタイプなど、形式はいくつかありますが、モバイル時に持ち歩いて使うときだけ挿せば、バッテリーの消費も抑えることができます。

 また無線LANは最近のネットブックをはじめとしたノートパソコンにははじめから内蔵されている機種が多く、無線LANサービスを契約して始めに設定だけすれば、特に機器を抜き差ししなくてもエリア内ならすぐに使える状態になります。

 WindowsなどのOSで設定するだけなので、通信モジュールを忘れて通信ができない、と言ったことがない点もメリットです。無線LANについては、フリーで使える場所があったり、オフィスのネットワークに入ることもできるため、極力無線LANに対応したパソコンを選択すると良いでしょう。

 無線LANを内蔵しているパソコンに加えて、最近では通信モジュールが内蔵されたノートパソコンも登場しています。NECのVersaPro UltraLite タイプVC FOMAハイスピード対応モデルは、FOMAカード(USIMカード)を挿せば煩わしいモジュールの抜き差しをすることなく、通信をすることができるようになります。

 もし積極的に外出先でデータ通信をすることが予想される場合は、ぜひFOMAハイスピード対応モデルを検討すべきでしょう。

■ モバイルデータ通信環境で何をするか?

 さて、モバイルでのデータ通信環境を手に入れた際に、どんなことを外出先でやるか、と言う点がイメージできなければ、なかなか通信モジュール選びや、そもそも必要かどうかを考えることは難しそうです。

 外出先で行う代表的な作業に、メールチェックがあります。ノートパソコンでメールを読み書きする際に、通信カードがあれば、ちょっとした電車移動や喫茶店などからでも、仕事のメールチェックをしたり、資料を取引先にすぐに送信することも可能になります。いちいち会社に戻らなければメールが読めない、と言ったこともなくなり、時間短縮につながります。

 これまで紹介してきたスマートフォンでももちろん作業をすることは可能ですが、イザ長くメールを書こうとしたとき、添付ファイルを操作して送り返したいときなど、スマートフォンだけではできない実用的な作業も、日々のメール処理の中には入り込んでいます。

 またスケジュール共有やグループウエアへのアクセスも、モバイルでのデータ通信環境があると便利に利用できる昨日です。突発的に入った予定や、お客さんと次の打ち合わせのスケジュールを決めたときに、すぐにスケジューラーに入力して社内共有を図るなどの活用ができます。

 そして、本連載の今後の回でご紹介するクラウドサービスを利用する際は、必須のインフラとなります。

 日々の仕事の時間の中で、移動時間が長い人、外出でアポイントをずっとこなしている人は、モバイルデータ通信環境を整えることで、より効率的に仕事をこなせるようになるでしょう。

Androidとは?

 「アンドロイド」といえば、人間型のロボットをイメージする方も多いかもしれませんが、これはケータイ・スマートフォン向けの基本ソフト(OS)を指します。2007年11月にGoogleを中心としたOpen Handset Alliance(OHA)を発足させ、AndroidはオープンソースのOSとしてスタートしました。

 Androidはウェブ活用に優れたモバイル向けOSで、普段皆さんが使っているウェブブラウザをケータイやスマートフォンの画面の中で完全に再現することが出来ます。また端末に入っているGPSやセンサーなどを生かしたアプリケーションやゲームを開発することも出来る、とても自由度の高いOSとして仕上がっています。

 オープンソースで有名なOSと言えばLinux(リナックス)があります。ソフト自体は無料ですが、各企業はそれを活用したサーバー製品やLinux向けソフトウエアを販売してビジネスをしています。ケータイの場合は、ケータイメーカーがAndroidを採用したデバイスを作り、開発者がAndroid向けのアプリケーションを自由に製作することが出来る環境がやってきた事を意味します。

 ケータイメーカーがAndroidを採用すると、OSがオープンソースで無料であるため、端末価格に対するOSの開発費やライセンス費用を提言することが出来るようになります。もちろん端末ごとのカスタマイズやメーカーらしいユーザーインターフェイスを開発する必要はありますが、開発ノウハウが蓄積されれば、高機能端末だけでなく、廉価版端末にも採用しやすいのがAndroidです。


iPhoneとどこが違うのか?

 Android搭載のスマートフォンやケータイの最初の特徴は「多様性」です。

 スマートフォンで現在トップを走っているiPhoneやBlackBerryは、それぞれアップルとリサーチ・イン・モーションの1社のみが開発・製造しているブランドです。これに対しAndroidは、台湾HTCを皮切りに、モトローラ、ソニー・エリクソン、サムスン、LG電子などの世界各国のメーカーが参加を表明しており、日本からもシャープが開発することを明言しています。

 非常に多くのメーカーがAndroid端末を開発することで、Androidをベースとして作られたスマートフォンをユーザーが選ぶ事ができ、またAndroid端末という市場が形成されていきます。ここで、先に述べた、開発者による自由なアプリケーション開発にもメリットが生まれてきます。

 Androidには、Android向けに開発されたアプリケーションを探し、ダウンロードすることが出来る「Androidマーケット」が用意されています。開発者はこのマーケットに自分が作ったアプリケーションを登録し、無料または有料販売をすることが出来る仕組みです。

 iPhoneにもApp Storeという同様の仕組みが既にあり、2008年7月のオープンから2010年1月までに15万本のアプリケーションが登録され、30億ダウンロードを達成するなど、非常に大きな成功を収めています。AndroidはiPhoneよりもさらに多くの台数のスマートフォンの出荷が見込まれており、iPhoneを上回るペースでマーケットが活性化すると見られています。

 またGoogleが開発に参加していることもあり、プライベートからビジネスまで幅広い活用が進んでいるクラウドサービス、Google Apps(Gmail、Googleカレンダー、Google Docsなど)との連携も実現しています。パソコンから使うウェブと、スマートフォン上で同期させながら、効率的にビジネスに生かす。そんな新しいワークスタイルを簡単にこなしてくれるのもまた、Androidの特徴です。


ケータイだけではない世界

 最後に、Androidのもう1つの魅力をご紹介します。

 ここまで、Androidがケータイやスマートフォン向けのOSとしてご紹介してきましたが、実はスマートフォンと同様に期待されているのが組み込み機器向けのOSとしての活用です。例えば冷蔵庫や洗濯機、エアコン、電子レンジといった家電に、Androidが組み込まれていくのではないか、という話です。

 Androidは通信専用のOSではなく、ケータイやスマートフォンも含む組み込み機器で利用できるようになっています。先に挙げた家電は「情報家電」というキーワードの元、インターネットからアップデートや環境情報、レシピをダウンロードしたり、家の中にある他の家電との連携を取っていくことが想定されています。

 Androidなら、家電の制御をしながら、得意なネットワーク接続を実現する近道になります。また、手元にあるスマートフォンから家電を遠隔操作したり、調和の取れた環境作りを実現することも簡単になるかもしれません。

 インターネットプロバイダNECビッグローブは、1月から、7インチディスプレイを備えたリビング情報端末のモニターを始めました。インターネットをパソコンとケータイ以外の場所でも使える用にする取り組みです。このように、ケータイ、スマートフォンの枠に捕らわれず、Androidが普及していくことで、より魅力的なプラットホームになっていく。Androidに対する大きな期待の理由はここにあります。

 オバマ大統領も大のお気に入りと伝わるスマートフォンのブランド、BlackBerry。2009年2月20日、約1年前にリリースされたBlackBerry Boldは、企業ユースを中心に広まりを続け、個人ユーザーに対しても定評のある端末に成長してきました。

 BlackBerryがビジネスユースで支持される理由とは、いったいどこにあるのでしょうか。


3つのターゲットをカバーするBold

 BlackBerryを開発するリサーチ・イン・モーションの小林盛人氏は、BlackBerry Boldがターゲットとなるのは3種類のユーザーだと語ります。

「まずメインターゲットとしたいのは、20代後半から50代のビジネスパーソンです。メール、インターネットの調べ物などの用途で使う人たちには、非常に便利に使って頂ける端末です。もちろん会社から支給される端末としてBoldを持つ人もいると思いますが、そうでなくても、自分自身の仕事の生産性、効率性を高めたい、管理したい人にはお勧めです」(小林氏)

 メインとなるターゲットは、スマートフォンが狙うユーザー層ど真ん中。ただ1点違うのは、 個人が自分のケータイとして持つこともターゲットに含めた点です。これまでのBlackBerryが法人契約主体でしたが、より積極的にビジネスパーソン個人にもリーチしようと取り組んでいます。

「2点目は、モバイルパソコンをいつも持ち歩いている人です。Netbookをかばんに入れて、オークションやブログ更新を絶えずやっている人にとって、非常に魅力的な端末になるはずです」(小林氏)

 スマートフォンについてよく比較されるNetbook。ソニーのVAIO type Pは、ドコモのパケット通信回線を使った常時接続性をアピールするなど、状況も変わってきました。現在のユーザーの多くはPCを開いて、イー・モバイルなどのモデムを接続、ダイアルアップをしてネットにつないでいます。

 こういうユーザーにとっては、すぐに取り出して情報をチェックでき、また得意の打ちやすいキーボードからのメール返信も苦ではない、そしてカメラもBlogには十分なレベルの物が搭載されている点で、即戦力として期待できます。情報発信をしたり、メールで指示を出す情報の起点となるユーザーにとって、文字入力は大きなアドバンテージと言えるでしょう。
 「3点目は、デザインにこだわるユーザー。海外のプロダクト、例えばクルマ、カバン、ファッションなどに興味のあるユーザーには響くデザインの端末を持ってきました。人とはちょっと違った物を持っていたいという人に、全世界のビジネスパーソンが持っているケータイとして選んで頂ければ」(小林氏)
 モノとしての魅力を高めている点は、BlackBerry Boldが過去の端末に比べて大きく優れています。この3点から、BlackBerry Boldはユーザーをビジネスから寄り広い人々へとリーチし始めました。


導入・管理までバックアップする体制

 パーソナル・ユースをアピールするBlackBerry Boldだが、やはり法人市場向けの端末としての側面は強くでています。BlackBerry Enterprise Serverと社内システムの組み合わせによって、イントラネットを確実に、そして安全に持ち出すモバイル環境を提供するソリューションとして、BlackBerryは世界的に信頼されるブランドでした。

 では、日本での導入のカギはどこにあるのでしょうか?

「海外では小さな規模の企業でも、仕事やコストの効率化のために選んで頂けるようになっています。しかし日本では、大企業が先行すると見ています。その中で、大企業と取引のあるシステム・インテグレーター(SIer)企業の方々に、扱って頂けるよう紹介していくことから始める必要があります」(小林氏)

 つまり、BlackBerryという新しいモノを、導入する商材としてSIerに紹介・説明して初めて大企業に提案が通る、という日本の商慣習にフィットさせる必要性を指摘しているのです。「SIerさんといかに関係を作っていくかが、企業向け導入でのポイントになるのではないか」と小林さんはパートナーとの協業に力を注いでいます。

 一方、端末を販売するNTTドコモはどのようにBlackBerry Boldを売っていくつもりなのでしょうか。スマートフォンビジネスを担当する三嶋俊一郎氏は、主にサポートを充実させることから、安心して使ってもらえる環境作りを推し進めています。

「ケータイなら、ドコモ端末を現場で販売している人たちの知識も深い。例えばi-modeであっても、登場して10年間経過した蓄積の上に、i ウィジェットやi コンシェルといった新機能が乗っています。ところがBlackBerry Boldは全く毛色の違う、ゼロから理解してもらう必要があり、全国を回って説明する必要がありました」(三嶋氏)

 店頭で販売するスタッフの知識もゼロからのスタートだ。もちろんBlackBerry Boldを選ぼうとするユーザーもゼロからのスタートになる。そこでドコモは、料金や購入後のサポートを、一般の端末以上に手厚く用意して、ビジネスで使うユーザーへのサービス充実につとめています。

「BlackBerry Careという、BlackBerry専門のサポートサービスをスタートしています。顧客だけでなく代理店にとっての駆け込み寺のような存在です。ケータイではなくITやパソコンのサポートを経験してきたスタッフを配置して、分からないことやトラブルの解決に当たります」(三嶋氏)

 将来的には、Windows MobileやAndroid端末なども含む、全てのスマートフォンを一元的にサポートできるドコモのスマートフォンのワンストップサービスを目指しているそうです。


Google Appsを使えば、中小企業でも導入可能

 また、三嶋氏と共にドコモのスマートフォン戦略を進める三浦智史氏が、中小企業向けのBlackBerry Boldの低コスト導入について、紹介してくれました。

「BlackBerryは、Google Appsとの親和性が非常に高いのです。BlackBerry Enterprise Serverを社内に設置するほどの規模がない中小企業は、BlackBerryとBISの組み合わせに、Google Appsを利用すれば、メールやスケジュール、連絡先などのプッシュや同期が可能になります」(三浦氏)

 Google Appsでオリジナルドメインを設定すれば、独自ドメインのメールをセキュアに利用できます。またGoogleの全てのアプリをBlackBerry Boldで利用可能になっているそうです。大規模な企業導入はリサーチ・イン・モーションとSI会社とのコミュニケーションによって、また中小企業に対してはドコモの専門サポートが受けられます。

 幅広い企業ユースへの対応、手厚いサポート体制、そして個人が持つ「モノ」としての魅力を高めたBlackBerry Boldは、スマートフォンが乱立するであろうこれからの日本のモバイル業界においても、一定の地位を保つことになりそうです。

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